大学入学するための英語の試験が良くない方向に変わっちゃうよ。な話。その2。
こんにちは。
てーはやです。
まだ日中は暑いですけど朝夕はだんだんと秋らしくなってきましたね。
前回お伝えした「大学入学共通テスト」について。
今日はいよいよ本丸です。
「英語」の民間試験活用に伴う混乱
これまでのセンター試験は「一発勝負」で受験する大学が決定してしまうとの声もありました。その反省からこの英語の民間活用については高校3年生の4月から12月までに2回受験した成績を各大学に開示することで、共通テストのみならず判断材料が提供できるようになりました。しかしこれには以下の大きな問題をはらんでいます。ちなみにこの民間試験、7つの検定試験が採用されていた、というのはご存じでしょうか。その6つとは、以下が主催するこれらの試験です。
・ケンブリッジ英語検定(Cambridge Assessment English)
・TOEFL iBT(Educational Testing Service)
・IELTS(IDP:IELTS Australia)
・TOEIC(一般財団法人 国際ビジネスコミュニケーション協会)→後日取り下げ
・GTEC((株)ベネッセコーポレーション)
・英検/TEAP((公財)日本英語検定協会)
・IELTS(ブリティッシュ・カウンシル)
受験料が高い
上記の中でも特に受験生におなじみの試験として「英検(主催:(公財)日本英語検定協会」と「GTEC(主催:(株)ベネッセコーポレーション」があげられます。これらの成績を大学入試に活用する場合、事前に「英語成績提供システム」というものに登録しなければなりません。この英語成績提供システム用の試験料がまあ高い。
例えば英検。
この英検は一般公開の英検と違い、成績提供システム用の英検だそうです。
それぞれの級の受験価格を一般の公開試験時の価格と比較して見てみると…。
準1級 9,800円 7,600円
2級 7,500円 6,500円
準2級 6,900円 5,900円
3級 5,800円 4,900円
2020年度「大学入試英語成績提供システム」利用型 英検®の実施概要|公益財団法人 日本英語検定協会
た、高い…。
準1級に至っては2,000円以上も一般のものと比較して高くなっています。
なんやこれ。
そしてGTEC。
GTECは成績提供システム用の試験と一般の試験とでは金額に大差はありませんでしたが、それでもCBTタイプ(高2~高3レベル)の金額だと9,720円(税込)と、検定試験にしては非常に高い金額になっています。
これでは複数回受験できたとしても、かなり金銭的に負担を強いることになります。
その時期に受けなければ級を持っていたとしても認められない
例えば、高校2年生までに英検で2級を持っていたとします。この2級が上記の成績提供システムに登録できるかというと、それはNoです。英語成績提供システムに登録後、再度上記の試験を受けなければなりません。
駿台文庫の「英文法ドリル」等を執筆されている田中健一氏が以下のような例も起こりうるとツイートされていました。
入試「改革」おかしな事例(ほんの一例)
— 田中健一 (@TNK_KNCH) October 7, 2019
帯広畜産大学を目指す高校二年生のA君は高校一年次に【英検準1級】を取得しています。同大学は出願資格としてCEFR基準A1を設定しています。これを確実に、できるだけ安価(5510円。利用可能試験の最安値)に取得するため、A君は来年度【英検3級】を受けます。
あらゆるものを無駄にしてる気しかしないんですよね。。。
いったい何のために入試改革をしているのかわからなくなります。
受験しても活用されるわけではない
これだけの金銭的負担、またその試験でいい成績をとるための勉強時間を犠牲にして民間の試験を受験したとしても、各大学がこの民間の成績の多くは活用されない見通しが立っています。
この記事によると、全大学1068校のうち、使われるのは半分程度のみ。しかも国公立でも全部が参加するとは限りません。自分が受験したいところの大学の募集要項を見てみると、英語成績提供システムに参加してませんでした、ってなった瞬間、ある種の絶望にかられると思うんですよね。
これまでのセンター試験は国公立大学の共通一次としての機能を果たし、そして年が進むにつれて徐々にセンター試験の成績を活用する「センター利用」といった方式が徐々に人気になってきました。しかし今回からの試験では半分程度しか使われない、というのは公平性に大きな問題があると考えます。
政府は止める気なし
10月1日文部科学省の萩生田大臣の定例会見で、萩生田氏は以下のようにコメントしています。
大学入試において民間試験の活用を支援し、4技能評価を促進する「大学入試英語成績提供システム」については、試験活用方法を明らかにしていない大学・学部が以前として多く、受験生が不安を感じていることから、文部科学省としては、高校関係者からの要望も踏まえ、8月27日に通知にて各大学に対し、遅くとも9月中に学部・学科別及び選抜区分別に活用方法等を公表するように要請してきたところです。9月27日には、全大学に対して9月中の公表を改めて要請するとともに、一定の猶予期間を設けつつ、9月中に公表した大学を対象としてシステムを運営する方向で検討を進めている旨メールにてお知らせをしたところです。9月末、昨日までに求めていた各大学・学部における試験活用の公表状況を速やかに取りまとめた上で、今週中には今後の方針を通知をする予定です。その際、27日付けでお知らせしたように、原則9月中に公表した大学・学部を対象としたシステムの運営とすることを明確化し、受験生の不安解消を図りたいと考えています。これは大学に「ペナルティを課す」趣旨ではありません。もちろん、高校生は、このシステムの実施を念頭に既に準備を進めており、システムは当初の予定通り2020年度から導入することとしますが、初年度はいわば「精度向上期間」、この精度は精密さを高めるための期間ということです。今後に向け、高校・大学関係者との間でも協議をし、より多くの大学がシステムを利用するとともに、受験生がより一層安心して、受験することができるように、システム利用の改善に取り組んでまいりたいと思います。
要するに、今まで変更がある前提で進めてきたから、今更やめるわけにはいかない、というのです。しかし問題に感じるのは「初年度は精度向上期間」と会見の冒頭で言ったことです。これではこの年に受ける受験生を実験台にしたといわれても無理はありません。この件に関しては3日後に釈明しています。
記者)
1点関連してなんですけれども、前回の会見でですね、初年度は精度向上期間という発言がございましたけれども、受験生からは実験台にしないでほしいというような反響もあるようですが、見解をお伺いできますでしょうか。大臣)
もちろん実験台になってはならないと思います。ですから9月末までで実施をするという大学、あるいは大学の中の学部をですね、明らかにすればですね、自ずと自分が望む学校については、その試験の必要性があるかないかが、まず第一義的には判断できると思います。その上で準備をしてきた皆さんは、試験そのものは、今回初めてではなくて既に民間団体が行ってきたものでありますので、それは中身については、今後ですね、更に精度を上げていくということは、この前もお約束したんですけれども、ここは受けれる人はしっかり受けてもらう、受ける必要のない人は受けないで結構ですという、第一段階でまずこの取り組みをしてみたいと思います。受けたくない人が、不安の中で受けなければならない人がどのくらいでるのか、そこをよく見てですね、できるだけその不安を取り除くために会場の確保ですとかこういったこと、あるいは様々な告知についても早め早めにしていきたいと思っています。
多くの場合9月というのは、たいてい志望校を決定しつつ、公募試験や推薦入試の対策をとる、忙しい時期です。その時期までにこの試験がつかわれるのかつかわれないのかがわからない、ということがそもそも問題なのです。
今回の改革から受験生に対してものすごく負担を強いることになります。
これからの将来を担う学生に負担を強いるような改革が罷り通っていいのでしょうか?
民間企業さん、英語成績提供システム認定おめでとうございます。
受験生の家庭から貪ったお金で食べるご飯は美味しいですか?